紅双華妖眸奇譚 (お侍 習作89)

       〜 お侍extra  千紫万紅 柳緑花紅より
 


 
          




 いよいよの目的地、シズル殿の母方の実家がある“東雲の郷”は目と鼻の先。となれば、相手だってどんな破れかぶれな手で打って出るか判ったものではない。こちらの油断も織り込まれての、力づくという乱暴な手で来られては、所詮は芸人の集まりに過ぎないか弱い所帯、十分な太刀打ちもままならぬかも。そこでと構えられたのが、相手を釣り出して、その手勢を引っ捕らえるという先手必勝の策であり。全員とまで行かずとも、大半を捕らえてしまえれば重畳と、かつては“斬り込み隊長”として北軍にて名を馳せた、名軍師がひねったのが外連味
(けれんみ)たっぷりだった こたびの仕儀。某処と連絡を取り合う傍ら、疑似餌とする段取りを組み上げるうち、一座の中からも手足となりたいと希望するお顔があったので。人形使いの小平太殿に小柄打ちの名人姉妹とそれから、雷王山のおとうと弟子、天遊山という力自慢の若い衆とに少々危険な現場への助っ人をお願いし。翌日の昼間中をかけて、裏方役の皆様総出で、機巧(からくり)仕立てのお人形を大急ぎで作ることにし。傍目からは単なる演目の一つ、芝居に使う小道具にしか見えなんだろが。実は実は、踊り手や座員に見せかけるための傀儡。ちょいと特別な工夫を埋め込んだことで、たった一人で操っているとは到底思えない、それは見事な動作をこなせるそれらがやっとのことで仕上がったのが、宵も間近い頃合いのこと。
『何とか間に合いましたね。』
『うむ。皆もご苦労であった。』
 今宵の大仕掛けを遂行するにあたり、自信はあったがそれでも万が一、何か突発的なことが起こらないとも限らぬと案じたは。さすが経験に裏打ちされたる周到さと巧智さ(狡智さ?)でもって、これまでどんな苦衷をも乗り越えて来た、策士・島田勘兵衛殿。用心のためにと、相手の目当てであるシズル殿を一人、他の座員たちとも隔てての、手練れである久蔵を傍らにおいて匿っておいた…のだが。

 『…こっちだ、急げっ。坊主は確保したっ!』

 夜陰の中の襲撃を予測した上で、見事に迎え撃っての撹乱作戦だったものが。そんな場の混乱をものともせず、若様を隠した祠の方から誰ぞを抱えて去った、鋼筒とそれを誘導する人影があり。
『馬子のじっちゃんっ!』
『あいつっ、草だったんか。』
 金を積まれて相手方と通じていた存在が、こちらの段取りまんまと盗んでいた模様。ところが、

 「久蔵が、お主を気絶させたのだな?」

 格子戸から差し入る月光に、青く染まったお堂の中にて。人事不省という状態で発見されたは、あの双刀使いの特徴ある紅蓮の衣紋を、無理から着せられていたシズル殿の方であり。ということは、そんな輩に手玉に取られてなるかとでも思ったか。そのまた裏をかいてのこと、久蔵がシズル殿と入れ替わっての“身代わり”となって、相手の手へ落ちた格好で攫われていったらしい…というのが、今現在までの状況で。誰ぞが確かに連れ去られてゆく姿を見て、だが、それを追おうとせずにこちらへ駆け戻った勘兵衛だったということは、

 “あの姿をちらり見ただけで、攫われたのは久蔵様だと気づかれたのだろか。”

 さすがはたった二人で、その背を預け合っての野盗退治に奔走してなさる練達のお侍様。月光が冴え冴えと降りそそいでいたとはいえ見通しは悪く、しかも出刃撃ち姉妹の投げた灯火で相手が照らし出されたのはほんの瞬間のこと。しかもしかも、あちらも かもじか、長い黒髪を揺らしておいでだったのに。そんな中でも見極めがついた動態視力は大したものよと、今更ながら一同が驚嘆しているのをよそに、

 「………。」

 当の軍師殿、シズルに成り済ました以上は持って行く訳にはいかずで置き去られたのだろう、相方の変わった拵えの刀をその手へ拾い上げたその場所で。何を見やってのことか、その彫の深いお顔を堅くして渋面を作っておいでであり。それへは座長のお妙が素早く気づき、次の手を打たずにどうされたかと歩み寄ったものの、
「これは?」
 勘兵衛が見下ろしていたのは、床の上の何かではなく、床そのもので。木目が邪魔になり、何より煌々と明るいわけではない状況下、ただ漠然と眸に入っただけならば、ただの汚れや木目と混同したかもしれないが。よくよく見据えると、微妙な濃淡の墨で、床一面に何やら書いてある。明らかに誰かが書いた…人為的なものには違いないのだが、
「…何か書画でしょうか。」
 流麗な線が大小幾条か。柳の枝が春風にそよぐが如く、嫋やかなせせらぎの瀬を写したかの如く、学のない身の自分にはウナギの行列のように並んでいるとしか見えないと、小首を傾げたお妙の傍ら。これへは見覚えがあったが、あったればこそ…ちょっと頭痛がして来た こたびの作戦参謀様。
「勘兵衛さま?」
「ああ、いや。」
 お加減がお悪いのでしょうかと、座がしらから案じられての我に返ると、背後に集まっていた顔触れを見回し、
「…天遊山、悪いが雷王山殿を呼んで来てはもらえぬか。」
「はいっ。」
 シズル殿を他の座員らが待機している場へ運ぶのへ、駆け出すところだった大きな背中へと声をかけた勘兵衛。すると、
「私なら此処に。」
 小平太と共に、人形に搦め捕られた賊らを引っ括ってたらしい、逞しい大男の角力本人が応じてくれて。いかがしましたかと、人懐っこいお顔を向けて来たのへ、目線で床の上を示して見せ、
「これを、どう読む?」
「はい?」
 少々煤けて乾いた板張りの床。差し入る月光のおかげで、こんな宵でも明るい方ではあるけれど、言われて目を凝らしてやっと、何か書いてあるのだと読み取れて………。

 「おお、これはっ。寒ぶり流ささめゆきではござらんかっ。」

 “………やっぱりか。”

 覚えてない方は、拍手お礼SSの『ささめゆき』をご覧下さい。
(苦笑) この、一見しただけだと字なのか絵なのかさえ解りにくい独特の書体こそ、その昔、大戦時代の南軍でこっそり流行っていたという、艶文用の婀娜な色香をまとわしたる草書体。あの神無村に居たころにも、これで伝言をしたためた久蔵だったのへ、北軍出身の勘兵衛や七郎次が全く解読出来なくてという一幕があったことを思い出し、

 “もしやして暗号のつもりだったのか?”

 相手がたに南軍出身の野伏せり崩れも混じっていたら、どうしたのだろうかと思いつつ、一通りを黙読したらしき雷王山殿に気づいて…目配せを送れば。

 「此処には、こうと記されておりますよ。
  “相手の思惑、何用なのかは直接訊いた方が早かろう。久方暁光”
  久蔵殿は、こんなお名前だったのですな。」

 それどころじゃないだろう、と。雷王山殿に言ってもそれこそ始まらないのでと受け流したものの。攫って行った相手への憤慨よりも、どうやら故意に運ばれてったらしい誰かさんの書き置きへ、ますますのこと表情を顰めてしまった司令官殿であり。眉間のしわをなお深くしつつ、その困った相棒の刀を手にしたまま、祠の外へと出てみれば、

 「…んん?」

 祠の前から転々と、月光を受けてか道の上に妖しく光るは、緑がかった目印の石。
「これは?」
「夜光石です。」
 こちらも雷王山と共に大慌てで駆けつけていたクチなのだろう、先程は見事に傀儡を操った小男・小平太殿が応じて。自分の着物の懐ろから小ぶりな巾着袋を取り出すと、それを手のひらの上で開いて見せる。中には同じような、ほのかに緑がかった光を帯びた小石が詰まっており、
「平八様から、さっきの傀儡への工夫の中で教わっていたのですが。」

 『暗転の中での、舞台や人形への目印にも使えますよ』

 それでなくとも夜陰の中での人形操作。しかも操縦者である彼は荷車のほうに身を潜めていたという遠隔操作だったので。制御を見る目印にお使いなさいと言われ、勘兵衛らにはお懐かしい仲間内、林田平八から、今朝がた取った連絡の中で製法を教えてもらったという。
「では、これはそなたが?」
「まさか、そんな。」
 攫われてはいけないシズル様を匿っている祠への、これでは目印になってしまうではありませぬかと、滅相もないとばかりにかぶりを振ってから、
「薬品を調合しておりましたところ、久蔵様が興味深げに眺めておいでになられて。」
 今回の夜駈け作戦で使うのだと話すと、
「久蔵様が、少し分けてほしいと仰せになられて。」
「…そうであったか。」
 ということは。これは久蔵が、自分が連れ去られた先への目印にと落としていったものに違いなく。こうやって使う機会もあるやもと、そうと感じて持参していた彼だったということは、

 “こうなることを織り込んでおったということか。”

 気づかなかった自分が腹立たしい。護衛にとついた彼とシズルとには、そうそう滅多にいなかろう赤眸という共通項があるその上、相手がこちらを襲うおり、赤い眸を目印にせよと口走った話も一緒に聞いていたというのに。

 “無鉄砲だけはするまいぞ、久蔵。”

 寡黙で冷徹、斬るときは息の根止めるまでという徹底したところのある彼であるけれど。だからといって常に冷静かといえば…怪しいもので。むしろ、ああ見えても限度を超すと、一気に激高しやすい性分かも知れぬと、勘兵衛には思えてならないものだから。短慮によって何かあってはならぬぞと、神ではなくの久蔵自身へ届けとばかり、強く念じてしまうのであった。





            ◇



 『顔までは知らぬが、その赤い眸には間違いないと言われて。』
 『わたしを無傷で連れ帰れば、莫大なお宝が手に入ると言われたそうです。』

 相手の陣営の駒たちが、シズルの人相を知らぬまま、なのにそれは的確に彼を見分けていたその理由。
「そうでしたか、そのような話を。」
 シズルが攫われかかった折に聞いたと語った、相手側の目串。赤い眸だということを目当てにされていたという点を、やはりお妙は知らなかったらしく、
「眸の色だけは、今のところ何とも変装のしようがないからの。」
 闇色の眼鏡やゴーグルをかけたところで、外されての検分をかけられたら一巻の終わりだし、そんな不自然な姿でいること自体が本人を絞り込むヒントになりかねず。
「ですが、シズル様だけじゃあない、和尚様も何も託されてはいないと。」
 伝言も書面も何一つ、ご両親から託されてはいない身の彼をどうして、そのような“お宝”云々目当てに狙うのかが、やはり判りかねますと言う座がしらへ、
「うむ。そこなのだがの。」
 もしかして。
「書面や暗号とかいう、ある意味、人から人へ手渡し出来るような、そんなものではないのかも。」
「…はい?」
 他の座員らのいる場に役人たちも到着したのでと、天遊山が運んで行ったがため、シズル当人は此処にいない。それでと、勘兵衛も斟酌なく言ったのが、

 「赤い眸…自体に鍵があったとしたら?」
 「え?」

 相手の雑魚どもは きっと、シズルの顔までは知らなかったに違いない。だのに、しっかと見分けた上で彼だけを掻っ攫おうとしたのは何故か。知らなくとも目印があったからではないか? では、

 「一座の全員に手をかけなんだのは何故か?」
 「はい?」

 それはまたどういう意味の問いですかと、小首を傾げるお妙へ、
「シズルから何かを得たいだけならば、何も彼を苦労して選び出しての攫わずとも、お主ら全員を襲えば済む。見境なしに襲って、さあさ早いうちに名乗り出なさいと脅せばいい。若しくは、他の団員に命惜しくばと示させればいい。」
 勘兵衛の容赦のない言いようへは、お妙がさすがにカッと来たらしく。その豊かな頬を赤く染めての眉を吊り上げ、
「そんな…っ。」
 食ってかかろうとしかかったものの、
「ああ。お主を筆頭に…まま、あの馬子は別だったが。一座の中にはシズル殿を売るような腰抜け、一人だっていないのだろうさ。」
 やんわりと微笑って見せる勘兵衛だったので、
「あ、えと…はあ。////////」
 勢いづきかけたお妙が機先を制されての鼻白らむ。誰が相手でも筋を曲げたりはしたくないとする彼女の気丈さが、この一座の気風を真っ直ぐなそれにしてもいるのだろう。腐したようですまなんだと、目元をすぼめての謝った勘兵衛は、だが、
「ただ、向こうがそうと思うかどうかは話は別だ。それは解るな?」
「…はい。」
 そんな手を思いついての仕掛けて来るという場合もあったのだと、あらためての言い置いた勘兵衛であり、
「だが、そのような方法では不味いからと、奴らは最後まで一番安直な手段は選ばなかった。そうまでしてシズル殿を“無傷”で手中に収めたいということは。赤い眸のシズル殿、御当人が、お宝とやらの鍵なのではなかろうか。」

  ―― そして、久蔵もまた、
      それへ気づいたからこそ、身代わりになったのかもしれないとしたら?

 すぐ間近に相手と通じている者が居たというどんでん返しに相対し、シズルを無事に守ろうと思ったならば…彼もまた赤い眸だったから。それしか目印がないというなら尚のこと、間違えたままでいてくれようと思っての英断。…というか、

 “単なる無謀だ、あれは。”

 早よう鳧をつけたいと したがってもいたようだし。何より、たかだか鋼筒一体の侵入くらい、あの練達がばっさと斬れば大事はなかったのではあるまいかと思うにつけ。後腐れが押し寄せての、この一件にいつまでもぐずぐずと関わることにならぬよう、根源を叩きに行ったとしか思えない勘兵衛であり。

 「ですが。シズル様は疎まれて家を出された訳ではありませぬ。」

 生まれてからすぐというほども幼い頃に、寺へと預けられたは、確かにあの眸のせい。
「そのようにせよという口伝が、お屋敷には代々伝えられていたのだとか訊いてはおりますが。」
 お妙の言いようへ、勘兵衛がおやと意外そうな顔になる。
「口伝で代々伝えられておったと?」
「はい。」
 ですが、どんな由来あってのことかまでは知らないとか。ただ、お体が弱かったには違いなく、それでだろうと疑わず。お預けになられた御両親様がたも、さして日を置かずにご寺社を訪ねるほどの可愛がりぶりでと。彼がいかに愛されていたのかを、説こうとしたお妙の背後から、

 「ええ。それは本家のほうでも仰せでしたよ。」
 「ヘイハチか?」

 夜陰の中から踏み出して来、勘兵衛へと向けて、お久し振りですと ぺこり頭を下げたは、相変わらずの工兵服をまとったえびす顔の平八殿。
「向こうの準備が整いましたので、わたしだけ先んじてこちらへ参ったのですが。」
 朝一番に連絡が来て、それで。何という偶然か、東雲に居合わせていたという彼と五郎兵衛だったので、それじゃあとあれこれ打ち合わせ。捕りこぼしという形での後腐れがないようにというのは、実を言えば誰もが感じていた杞憂だったので。念には念を入れての策を構えることとなり、
『そちらに機巧に詳しい方はおいでじゃないですか?』
 人形あやつりの名手がいると伝えたところが、その名人の小平太殿と、電信で何やら打ち合わせての、今宵の機巧
(からくり)仕立ての大仕掛けを展開させた彼らでもあったのだが、
「どうやら、突発事が起きたようですね。」
 そんな言いようをするあたり、役人か座員からか現状というものも既に聞いているらしいのだが。そうと言いつつも、さしたる切迫感もないままに、苦笑をするばかりの彼であり。勘兵衛もそうだが、攫われたのがあの久蔵ならばというところが、平八にも安堵を抱かせているらしい。あの久蔵が、しかも自分から仕掛けたというのなら、若様本人が攫われたよりはずっと安心も出来るというもの。全く案じていない訳ではないが、
「おおよそは手筈どおりに運んだのでしょう?」
「ああ。一座の者らもシズル殿も無事だ。」
 こちらへ襲い掛かるような大層な後陣がまだまだ控えているとも思えぬが、一応の大事を取ってのこと、東雲の宿場へ通達を出しての、捕り方を差し向けてもらうこととなっていたのとは別口、シズルを迎えにという一団が到着し次第、久蔵を攫って行った輩の逃げた先、恐らくは本拠だろうそこへ乗り込むという段取りを、既に構えている勘兵衛であるらしく。そういった段取りを訊いた平八、頼もしいことよと微笑っての“承知”と相槌を打ったものの、

 「ただ。ゴロさん、五郎兵衛殿が気になる噂を拾って来ましてね。」

 彼らの側が集めた情報の中、どれほどの確信のあることかが不明だったので、あまり気に留めないでいたのですがという、妙な言い回しの前置きをしてから語ったのが。

 「噂というか、昔話と言いますか。
  その昔、ここいらにはそりゃあおそろしい妖異がいて民を困らせていたそうで。」

 それを侍も農民も総出で退治し、此処から間近い妙剣山という山の洞窟に封印したそうですが。そのおり、復活せぬようにと、妖異の眸を領主の側室の子に封じたそうです。
「ところで。こういった昔話は、内容によっては支配者階層の所業への比喩かと解釈されての、厳しいお咎めを受けることがある。それでと、そのまま広めては不味い部分が、別物へ具象化されて伝えられている場合が多いんですよね。」
「うむ。」
 例えば、炎を吐く龍は火山の熔岩流の喩え、そこから現れた神剣とは鍛冶の技術で生み出された刀剣という意味だったり。童遊びの“花いちもんめ”は、実はハナという少女が一匁で売り買いされたという意味だとする、怖い説もあるとかで。
「その伝説に出てくる、封印された妖異の眸とは“双炎”と呼ばれる宝珠だそうです。」
「それが“お宝”ということか。」
 今のところはそうとしか思えませんねと、平八が頷き、
「ただ。二つの炎っていうのが、別な意味でも気になるとゴロさんが。」
 単に“妖異の眸”だから、元は一対のものだったとしてそういう名前を言い伝えたのでしょうけれど…もしかして。

 「領主の側室の子に封じたというくだりが、
  すなわち“炎のような眸”を持つ存在という意味で、
  それが…その言い伝えの鍵になってもいるのじゃあないかって。」

 そちらの方が仰せになった、必ず子孫へも伝えよとされ、口伝で語られて来たことなら尚更に、赤い眸がこの地では意味のあること。そして本当の現実に、稀であるはずの赤い眸の子息が生まれた訳でしょう?
「相手は何をどこまで知っているのか。いやさ、何をどうしたいのか。」
 それが現実には接点を持たぬ“おとぎ話”や妄想であっても、それを完遂したいとする者には“現実”に根を張ると同等の一獲千金話に化けかねない。本当に何か財宝があっての仕業なのか、もしやして…何のゴールも待ってませんという幻想への暴走か。どっちにしても、その鍵にと目をつけられたのが“赤い眸”という要素であるなら、

 「偽者とばれても、久蔵殿、すんなりとは解放してもらえないかもですね。」

 解放されなくとも、自力で戻って来そうな人ではありますがと。どっちにしたって心配は要りませぬかと苦笑を見せた平八へ、だが、勘兵衛は逆に…少々打ち沈んだ顔となり、
「勘兵衛殿?」
「うむ…。」
 いかにも感慨深げな表情になっての呟いたのが。


  「………単なるおとぎ話へ、今時の海千山千な野盗が踊るかの?」









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  *何だかややこしいことに、なったというより、
   してしまった双刀使いさんだったようですね。
(苦笑)
   はてさて、どう収拾がつきますことやら。
(とっほっほ)


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